マタニティマーク付ける?付けない?

妊娠・出産

妊娠16週から18週にかけて、日本へ一時帰国していました。

個人的には妊娠期間中の長距離移動を伴う旅行はしたくない派なのですが、日本で出産するために日本の病院を受診しなくてはならず、どうしても必要な移動でした。まだつわりもあり、不安ではありましたが、ドバイの主治医に「なにも問題なし」との太鼓判をいただき、帰国することにしました。

その時に長距離移動や日本の寒さ以上に不安に思っていたのが、久しぶりの東京の混雑した電車に乗ること。

ドバイでももちろん電車に乗りますが、東京の電車ほど混むことはありません。また、基本的には車社会でタクシーも日本より安いので、電車に乗る頻度も日本で生活するよりは少ないです。

ここで私は「マタニティマーク」の存在を思い出します。

マタニティマークとは

  • 妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするもの。
  • さらに、交通機関、職場、飲食店、その他の公共機関等が、その取組や呼びかけ文を付してポスターなどとして掲示し、妊産婦にやさしい環境づくりを推進するもの。

出典:厚生労働省HP・マタニティマークについて

誰しも一度は電車の中などで見かけたことがあるのではないかと思います。

特に、妊娠初期は、まだおなかは目立たず、「妊婦」と認識してもらえることはまずありません。このマークで認識してもらう以外に妊婦とわかってもらう方法はまずないかと思います。

マタニティーマークを付けるべき?

私が日本に一時帰国した時期もまさに外見からは「妊婦」とわからない時期でした。特にコートを着る季節でもあったので、マタニティーマークなしに妊婦と認識してもらうことは不可能でした。

しかし、つわりは完全には終わっていませんでした。体調も万全とは言えない。

「席を譲ってもらいたい」と思うような状態になるかもしれないし、最悪の場合、移動中に倒れた時には妊婦とわかってもらえないと適切な処置をしてもらえないかもしれない、と思いました。

ではなぜマタニティマークを付けることをためらうのか、それには理由がありました。

マタニティマークを付けるのをためらう理由
  • 「マタニティマークを付けていて嫌がらせを受けたことがある」という話を聞いていた
  • マタニティマークを付けていると「席を譲ってほしい!」と強く主張し過ぎなのではないかと周囲の目が気になった

マタニティーマークを付けていて受ける嫌がらせ

「マタニティーマークを付けて電車に乗ると、露骨に嫌な顔をされる」と妊娠経験のある友人から聞いたことがありました。

また、インターネットでは、「故意に押された」など赤ちゃんや自分の身に危険が及ぶような嫌がらせを受けたという人も見つけました。

周囲の目が気になる…マタニティマーク

友人の話やインターネットの情報で、仮に嫌がらせを受けなかったとしても、マタニティマークを付けるべきか迷うようになりました。

それは、「日本の妊婦に対する視線はこんなにも冷たいものなんだ」と感じたからです。

マタニティマークを付けることで、こんなにも冷たい視線にさらされなくてはならないのならば、我慢してでも付けない方がいいのではないかと考えるようになりました。

結局付けたり、付けなかったりのマタニティマーク

マタニティマークを付けるかどうか決められなかった

結局、東京滞在中はマタニティーマークを付けたり、付けなかったり。どちらとはっきり決めることはできませんでした。

基本的にラッシュ時間は避け、そこまで混雑しておらず、危険を感じない時にはマタニティーマークは付けませんでした。ただ、混雑していて「押されたり人とぶつかったりするのが怖い」と感じた時や、体調が悪くつらい時はマタニティマークを付けることにしました。

ただ、優先席の近くには極力近づかないようにしました。マタニティーマークを付けて優先席の前に立つと、「譲って下さい!」と強く主張しているようで気が引けたからです。

2週間の日本滞在中に3回席を譲っていただくことがありました。気付いて下さる方の存在がとても嬉しく、最初に譲っていただいた時には不思議と涙が出ました。譲ってくださった方は全て同年代30代の女性でした。

このような記事を見つけました。

「1人目妊娠中には付けてましたが、2人目の時は隠したりしてました。1人目の時、優先席の近くに立っていたら、座ってる元気そうなアラフィフくらいのご夫婦に『絶対譲らないからな、何様のつもりだ!』とブツブツ言われ続けたので…。」
そう話すのは、1人目を2011年、2人目を2013年に出産したAさん。
「そんなことがあったので、2人目の時は、優先席付近にはあまり行かないようにしていました。座ってる方も、優先席だと譲らなきゃならないと思う人が多いけど、普通席なら譲らなくてもいいと思いそうなので、その方が気が楽でしたし。譲ってもらえた時も、なんだか申し訳ない気持ちがあって、ひたすら目をつむって寝ていました。また何か言われそうで。」

出典:「マタニティマークが付けられない…なぜ妊婦が萎縮する社会になったのか」

この方の気持ちがとてもよくわかります。譲ってもらっても、ありがたい気持ちはもちろんあるんですが、なんだか申し訳ない気持ちにもなり、また周囲の目も気になってしまいました。

東京の電車でした怖い体験

マタニティーマークを付けていて、露骨な嫌がらせを受けたことはありませんでしたが、一度とても怖い経験をしました。

それは駅の乗り換えの移動中のことです。人ごみを避けるために、駅構内での移動は他の乗客の方の移動がある程度終わるのを待ってからにしていました。その時も、人が減ってから、手すりを持ちながら階段を降りていました。

すると、階段の先のホームに電車が到着する音が聞こえてきました。私がペースを変えることなくゆっくり階段を下りていると、後ろから駆け込み乗車をしたい男性が猛ダッシュで走ってきて、ぶつかってしまいました。

私は手すりの側にいたので、幸い転倒することはありませんでしたが、かなり危険でした。その男性は、ぶつかったことに気付いてはいたようでしたが、そのことを気に掛けることもなく、そのままダッシュで電車に駆け込んでいきました。

この出来事で、「東京の電車は怖い」という印象はさらに強くなりました。

そもそもこの男性は、私が妊婦なのか、足を怪我しているのか、高齢なのか、そんなことを確認する時間もないくらいに急いでいて、ただ自分のことだけを考えていました。妊娠前から「東京の電車は危険だな」と思ってはいましたが、実際に自分の身体が通常とは違う状態になってみて、改めて「怖い」と感じたのでした。

「妊婦様」という言葉の衝撃

マタニティマークを付けてもよいものか考えている時に、「妊婦様」という言葉の存在を知りました。これは「妊娠していることを理由に横柄な態度をとる女性を批判的に表す言葉」です。

まさに妊娠している私にとっては、なんとも冷酷な言葉です。

もちろん実際にマナーの悪い横柄な妊婦もゼロではないと思います。しかし、こんな言葉のできてしまう国で安心して妊娠出産、子育てができるのでしょうか?

妊娠してみると、自分が妊娠前に想像していたよりずっと、体調が目まぐるしく変化しました。

お腹の目立たない妊娠初期の重要性、その時期のつわりのつらさ、あらゆる体調不良に次から次へと見舞われること、お腹が大きくなって不自由になる身体。

私自身、妊娠前の自分は、妊娠されている方への配慮が不十分だったと反省しました。

単純に「妊娠は病気じゃないからなんてことないのに、配慮を求めるなんておかしい」と無知識がゆえに、冷たい態度をとる人もいるのかもしれません。「自分だって疲れているのに」と憤っている人もいるのかもしれません。

それぞれ、事情はあるでしょう。ただ、やっぱり思うのです。

こんな国で安心して妊娠出産、子育てができるのでしょうか?そうしたいと思えるのでしょうか?

日本にはレディファースト文化もないですし、長らく妊娠出産、家事育児は女性の仕事とされてきた背景があるので、一朝一夕で妊娠出産、子育てのしやすい国になるものではないと思います。

少子化対策で法を整備したり、インフラを整備するのももちろん大切です。

ただ、妊娠出産子育てをする女性や子どもに対して、社会からのあたたかいまなざしがなにより必要だと思うのです。

これは妊婦に限った話ではない

ここまで散々、妊婦とマタニティマークの話をしてきましたが、なにもこの話は妊婦に限った問題ではないと思うのです。

これは私自身の反省ですが、妊婦として生活しているとこれまで気付かなかったことにたくさん気付くことができました。

片手にベビーカー片手に子どもを抱き階段を上がる方、電車内で子どもが泣き止まず必死であやす方、エレベーターが見つからず困っている車いすの方、道に迷った外国人の方。これまでよりずっと多く感じました。きっとこれまではただ私が見過ごしていただけです。

「妊婦」になることはなくても、誰だってこの「困っている人」の側にたつことはあるわけです。明日、足を怪我するかもしれません。

「困っていたらお互いに助け合おうよ」で本来すむ話だと思います。

一部のマナー違反する人を批判し、例えば「妊婦様」などと言う言葉ができるなんてとても寂しいことです。

この2週間、私自身、困っている人に気付ける心の余裕をもって生活したいと改めて思いました。

東京の電車が「困っていたらお互いに助け合おうよ」の心の余裕と、あたたかいまなざしでいっぱいになるように、自分のできることをしたいと思います。