出産前にパートナーと読みたい本4冊・産後クライシスを乗り越えるために

妊娠・出産

つわりのピークを越え、やっと妊娠の実感がわいてきた頃、「嬉しい」よりも「大丈夫かな」という不安の方が大きくなっていました。海外での育児になること、両親・義両親ともに他界しているため頼れる人が少ないこと、パートナーは出張が多く不在がちなこと。考え出すときりがありませんでした。

とりわけ、「出産前はけんかをしたことがなかったのに夫婦喧嘩が絶えない」「子どもができると夫に腹が立ってしかたなくなった」「産後クライシスって知ってる?」といった夫婦仲に関する友人たちの言葉がとてもひっかかっていました。

まだ出産前でしたが、確かにつわり中も彼にイライラしてしまうことが多かったです。家事を手伝ってくれようとするものの、それが途中で投げ出されているのを見つけた時の絶望感と苛立ちはホルモンバランスのせいもあってか、自分でもびっくりするほどでした。

「産まれたら手伝うよ」とよかれと思って彼が言ってくれても、「あなたはお手伝いさんではなく、子どもにとっての責任者の1人だ」と烈火のごとく怒っていました。

少し冷静になってみると、仕方のないことなのかもしれません。私自身もつわりをはじめ、妊娠中の身体と心の変化の大きさは想像をはるかに超えるものでした。それらを全く経験しない男性に想像してもらうのは簡単なことではありません。

ただ、産後もこのギャップが埋まらないと、夫婦関係にも子どもにも影響が及ぶことは必至。完全に埋めることは難しくても、少しでも女性の心身の変化や、子育てについて知っておいてほしいと思ったのです。

そこで、彼に何冊か本を読んでもらうことにしました。

私から直接訴えるよりも、客観的な第三者の意見の方が受け入れやすいのではないかと思ったからです。妊娠・出産・育児にまつわる気持ちの変化や状況を知ってもらうためのひとつの方法として、試してみる価値はあると思います。

「嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本」

著者の荻田和秀さんは、綾野剛さん主演のドラマ「コウノドリ」のモデルとなった産科医です。完全に綾野剛さんのイメージで読みはじめたのですが、頻繁に登場する関西弁ですぐにそのイメージではなくなりました。

この本は、夫が妊娠した妻とちょうどよい距離感をつかむために必要となる知識が書かれています。産科医の視点なので、妊娠中や出産時の話が中心です。

妊娠した当事者である女性は、自分の身体と心の変化に嫌でも向き合わなくてはならなくなります。そのため、インターネットや本で情報収集したり、妊娠経験のある母親や友人に話を聞いたり、検診の際に主治医に相談したりすることで、知識は自然と増えていきます。一方で男性は、妻に話を聞くか、自ら意識して調べない限りなかなか知識が増えることはありません。

この夫婦間の知識の差が、「そんなことも知らないの?」「そんなことも気にならないの?」と妻の苛立ちにつながっていることも多いと思います。私自身も妊娠初期はつわりのつらさで夫とのコミュニケーションが十分ではなく、「これだけ私がしんどいのに、つわりや妊娠について自分で調べるくらいしてよ!」と思っていました。

そんな知識の差による夫婦間の溝を埋めるのに、この本はとても役に立つと思います。

    目次から抜粋・この本の内容
  • 「オメデタ」はいつわかる?
  • 「太る・むくむ」は母になる証
  • ダンナが率先してワクチン接種を
  • 病院選びは安全第一
  • 男には絶対耐えられない「陣痛」
  • 「流産」は意外と多くて約15%
  • 「出生前診断」は夫婦で決める
  • 妊娠は子供と出会う命がけの旅
  • 自責する嫁ハンを救うのはダンナ

知識が増えるのはもちろんですが、「夫に知っておいてほしいこと」という視点で書かれているので、ピンポイントで知識をつけてもらうことができます。

また、「妊娠って大変なんだよ」「出産って命がけなんだよ」「育児も大変なんだよ」と自分で訴え続けるのはなんだか気が引けますが、第三者の医師から客観的に伝えてもらうことができます。

確かに、子育ては大変です。強烈に大変です。そして嫁ハンは死ぬ覚悟でお産をして、死にものぐるいで子育てをしています。本当にイクメンを目指すならば、同じ覚悟でやれ、という話です。それを中途半端な気持ちで「イクメン気取り」になると、痛い目に遭います。

出典:「嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本」131ページ

妊婦さんも赤ちゃんもリスクを背負っています。ダンナもリスクを分担する周産期医療スタッフの一員であると、自負してください。それだけでいいのです。

出典:「嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本」165ページ

男性のために書かれた本ではありますが、もちろん妊婦自身も正しい知識をつけるのにとても役に立ちます。夫婦そろって妊娠初期に読むと勉強になることばかりです。

「産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート」

この本の著者である渡辺大地さんは二児の父親です。第一子の子育ての時にご自身は「イクメン」だったと自負していたものの、第二子妊娠がわかった際に奥様は全くそうは思っていなかったこと知り唖然とします。そして産前産後のサポート事業をはじめるに至った方です。

なぁにがイクメン⁉遅く帰ってきてせっかくねた子を起こすわ ねかしつけるまで「ごはんまだ?」ってボケッと待ってるわ 毎晩毎晩「リョウくんかわいかった?」ってこっちは悪露や抜け毛やいろんな悩みで体も心もボロボロだったのに 気づいてなかったんかー‼

出典:「産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート」3ページ・妻のセリフ

著者の渡辺さんに悪気なんてなく、むしろイクメンのつもりで頑張っていたことが、ことごとく裏目に出てしまっています。

この夫婦間のギャップ、産後を経験していない私ですら思い当たることがたくさんあります。産後、新しい生活がはじまってからなんて、きっと想像を超えるギャップがあるはず。

この本は、そんなギャップの数々を予習することができます。漫画とコラムなのでとても読みやすい構成になっています。

    目次から抜粋・この本の内容
  • 家事をやっているのに妻から評価されない本当の理由
  • 男性はなぜ、ウンチのオムツ替えの前にひと言発する?
  • パパの「全部」とママの「全部」は違う!
  • 「伴侶」と名乗る資格のある人とは⁉

まだ産後を迎えていない私が言うのもおかしな話ですが、「そうそう!」「それを夫にわかってほしい!」と思うことがたくさん書かれています。

妊娠中のご夫婦にお話しする「父親学級」の中で、「奥様が話をする元気もないほど疲れているとき、ご主人はどうしますか?奥様はどうしてほしいですか?」と質問すると、多くのパパさんが、「妻に代わって家事・育児をする」と回答します。

ところが(そもそも、男性が家事・育児を1人で片づけられると思っている時点で危なっかしいのですが)、ママたちの多くが、「夫に家事をやってもらっても、疲れはとれない」と答えます。

このギャップはどこから生まれるのでしょうか?

ママたちが疲れているのは、家事の仕事量が多いことよりも、誰のためにこの家事をやっているのか、いつまでやり続けなければいけないのか、この努力を評価してくれる人はいないんだろうか、という焦りや虚しさなんだそうです。

出典:「産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート」79ページ

この部分を読んで、仕事をやめて専業主婦になって感じていた「虚しさ」を言語化してもらったような気持ちになりました。海外赴任について行くことを決めたのはもちろん自分ですが、養ってもらっていることに慣れない居心地の悪さと相まって「虚しさ」を感じていました。

この本には、夫婦の考え方のギャップの正体がわかりやすく書かれています。女性が読むと「自分だけじゃないんだ」と安心できる部分もありますし、男性が読むとハッとすることが多いのではないかと思います。

「ママだって、人間」

著者の田房永子さんは、「母がしんどい」などの著作で有名な漫画家です。コミックエッセイやコラムなどを書かれています。

私、田房永子さんの大ファンなんです!田房永子さん大好きな友人に教えてもらって、なにかのコラムを読んだのをきっかけにTwitterもフォローさせていただいています。

この方の著作全てに共通して言えることは、ひたすらに素直です。なんとなく避けて通りがちな問題や、あえて表現することをためらうようなことを、素直に書いて下さっています。

    目次から抜粋・この本の内容
  • つわりは母性でなんとかなる?
  • 妊婦のセックス
  • 母親学級カースト
  • とにかく夫がイヤになる
  • 何もしないジイさん

この「ママだって、人間」では、「妊婦だって、ママだって、人間だ」という当たり前なのにいつの間にか忘れ去られてしまう大切なことが、田房さんの経験を通して漫画でわかりやすく書かれています。

例えば、70ページに「世間が認知するお母さん像の枠」が登場します。本当はお母さんにだっていろいろなお母さんがいます。趣味だって、仕事だって、家事スタンスだって、性格だって全く違うはずなのに、お母さんになった途端、その枠に合うように生きることを求められてしまうことを表した枠です。

「育児は大変でしょ」「出産は痛かったでしょ」と言われたら、本当はそう思っていなかったはずなのに、「大変だけど赤ちゃんはかわいいです」なんて、いかにも求められているような当たり障りのない返事をしてしまうこと、あるかと思います。そういった「世間が認知するお母さん像の枠」に合わせるほうがきっと楽だから。でもそうやって枠に合わせる息苦しさ、気が付いたら自分を失ってしまっている恐怖ってなかなか他人には伝わりにくい気がします。それを田房さんご自身のエピソードを読むうちに、「この苦しさは自分だけじゃないんだな」と私はホッとしました。

まだ私は「お母さん」ではありませんが、妊婦になって以来、「世間が認知する妊婦の枠」を感じることが多々ありました。例えば、妊娠初期なんて、おなかが大きいわけでもなく、実感がわくわけでもなく、ただただつわりで水も飲めない、動けない状況に絶望していただけだったのに、「子どもを授かれてうれしい」という母性全開の妊婦でいた方が楽だな、と思うことが多々ありました。

自分の中だけでもやもやしていた息苦しさを、しっかり描いてくださっているので、女性が読むとホッとする方が多いのではないかと思います。男性はピンとこない部分もあるかもしれませんが、タイトルの通り「ママだって、人間」をこのコミックエッセイを通して思い出してほしいと思います。

「子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法」

あまりに刺激的なタイトルに思わず手にとってしまいました。原題はニュアンスが違うのかな?と思って確認すると、「How Not to Hate Your Husband After Kids」。そのままでした。

著者のジャンシー・ダンさんはニューヨークに暮らすエッセイスト。一児の母です。「子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法」は、出産後、口論を繰り返すようになった著者が、夫婦関係を出産前の状態に戻すことはできないかとアドバイスを求め、試行錯誤する様子を綴ったエッセイです。

    目次から抜粋・この本の内容
  • 母親、父親、そこにある問題
  • 「立ち上がってとっとと手伝いやがれ!」
  • ねえ知ってる?あなたの子どもだって洗濯物を畳むことができます
  • いつかは二人に戻る……もう一度、派手にやり合わなければ

この本を読んでまず思ったのは、夫婦の問題って日本以外でも同じなんだ、ということです。よく、日本の長時間労働や、日本人男性の家事育児時間の短さなどが話題になりますが、そういった背景が異なっていても、夫婦喧嘩の内容にも、子どもがいる家庭の夫婦関係の悩みも大差はありませんでした。

家庭内に存在する、家事・育児に関する男女間の不平等を、子どもの世代、そしてその先まで引き継ぐことがないように、今、親として子育てをしている私たちが認識を変えていく必要があると本書は説く。これは本書が著されたアメリカに限った話ではなく、少子高齢化社会を迎えつつある日本だからこそ、改めて主張していく必要があることだと感じる。自分の娘が将来、家事や育児に翻弄され、疲れ切って涙することを望む親がいるだろうか。仕事さえしていれば家事をおろそかにしていいと思い込み、妻が苦労している姿を見て見ぬふりをする男性に息子を育てたい親がいるだろうか。それを望まないのであれば、状況を変えるのならば、今しかない。そして、変わる必要があるのは、私たち自身もそうなのだ。

出典:「子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法」414ページ・訳者村井理子さん訳者あとがき

著者は、ただパートナーに腹を立てたことを書きなぐっているわけではなく、娘のためにも、夫婦関係をよくしていくために、あらゆるアドバイスを求め、自分自身も変わろうとします。

歴史的に築かれてきた夫婦の役割分担と、現在の自分自身が求める夫婦の在り方とのギャップを埋めるために、ただやみくもに疲弊していくのではなく、彼女のように試行錯誤する人でありたいと思います。パートナーを非難するのは簡単ですが、自分自身を見つめ、社会の変化を知り、建設的に行動をするのはとても難しいです。特に、妊娠中や産後にそんなことなかなかできないかもしれません。(私も特に妊娠初期は感情のコントロールなんてさっぱりできませんでした。)

そういう時だからこそ、夫婦ともに、この本の著者ような第三者の葛藤を知ることで、自分自身を冷静にみつめるきっかけと勇気をもらえるのではないかと思います。